人間学 「コミュニケーションの原理」

- KAI -


1988年にオープンして以来、ゆっくりとしたペースではありますが、
100号まで発行することができました。
読者の方やインタビュイーの皆さん、著者、出版社の方々がつくりだす
意識の潮流に関われていることに感謝しています。

今号は趣向をかえた内容にしたいと思案していたところ、
偶然、ある書類が事務所の本棚から見つかりました。
タイトルは『人間学』。ブッククラブ回の生みの親が書いた物でした。
今回は、その一部である「コミュニケーションの原理」をご紹介します。
約30年前に書かれたものなので読みにくい箇所もありますが、
ブッククラブ回が大切にしている
原点の質のようなものを感じていただけると思います。





人間自身と人間世界と人間環境の
理解を進めていくのが人間学である。
とりたてて悪いことをしなくても、
無知、無感覚が人間を不幸にしていくことがある。
また観念や、偏った感覚の過敏さが
人間を不幸にしていくことがある。
人間の資質の中には良いものも悪いものも
雑多に混ざり合っている。
だからそのまま生きるのでなく、良いものをどうやって活かし、
悪いものをどうやって消していくことができるかを学ぶことが
人間としての成長、成熟につながっていく。
人間のための文化を育てなければならない。


- KAI -






人間学


人間の研究という、新しい学問が生まれつつあります。
これは、全員参加の学問です。
人間を知ろうとする努力は、人間の歴史と共に、
絶えることなく、おこなわれてきました。
宗教、哲学、芸術もそうでしょうし、
近代西欧科学が活発になってからは、
様々な分野が生まれてきました。
生理学、心理学、生物学、社会学、経済学、等々。
より研究を深くするために細分化されてきた各分野ですが、
各研究者たちは、どんなに追求をすすめていっても、
その枠の中だけにとどまっていれば、
何らかの不足が生じてくることを感じています。

人間は各部分の集合したものとは、
とらえられないのです。
そこで、それら全体をトータルな目で見ようとする、
新しい観点が必要になります。
散り散りになった知識を拾い直し、
総合的に、もう一度、人間を見ようとします。
それは自分の中にある、自然を発見し、味わうことです。
人間とは自然そのものです。

自然食を実践したり、田舎暮らしをしたり、
ということだけが自然に帰るということではありません。
一つひとつ、自然を理解していかなくてはなりません。
ここでは、そういう観点から、
いろいろな分野の研究も紹介しながら、
みなさんといっしょに、
〈人間〉というものを見ていきたいと思います。
それはあなた自身と、あなたのとなりにいる誰かさん。
その人を理解することです。
そこに初めてコミュニケーションが生まれます。
人間は群生動物ですので、
〈誰か〉なしには生きられません。
他人が必要なのです。人間は孤独を恐れます。
ですが、人を求める時に、
ただ、「孤独の恐怖から解放されたい」
という所から出発しますと、
近づけば近づくほど、いろいろな悲喜劇を生みます。
そうでなく、
「自分を理解し、同じように誰かを理解したい」
というコミュニケーションを育てていきましょう。
それが活き活きと、楽しく生きていくための
ガイドラインになっていければ幸いです。



コミュニケーションの原理


  万物は諸行であり
  全てのものは同じく一つのものである

というのは仏教の教えるところのものです。
また、世界じゅうのさまざまの宗教、
偉大なるマスターたちは同じことを言っています。
近代科学の発達の過程は、
そんな宗教的な教えとはまったくかけ離れた方向へ
向っているように思われていましたが、
最近になって、科学とは宗教的教えの
科学的証明をするための発達だった、
と思われるような発見が次々と起こっています。
「振動子の同位相固定」という現象があります。
〈同乗作用〉と呼ぶものです。
二つ、あるいはそれ以上の振動子が同じ場で
同時に振動している時には、
必ず位相が一致する傾向があって、
その結果、まったく同時に振動するようになる、
というものです。
その現象がおこる理由は、
自然には最も効率のよいエネルギー状態の方へ
常に動こうとする性質があるからです。
反対方向に振動するよりも、
共振する方がエネルギーが少なくてすむ、
ということです。
この現象は万物に共通であって、
人間も、もちろん、例外ではありません。
人間は体内に発振器を持つ「リズムの場」です。
ほとんど気づかれることがないのですが、
いいコミュニケーションが起こる時には、
必ず、この同乗作用が起こっています。
今までの、誰かととても気持ちよく話ができた
場面のことを思い出してみてください。

〈話したいと思っていることを相手がたずねる。
聞きたい答えが返ってくる。言葉がスラスラとでてくる〉

そういうことがあります。
あるいはすばらしいコンサートでの、
会場の一体感はどうでしょう? 
また、同じ家で生活している家族は、
大体、同じようにおなかが空いたり、
寄宿学校にいる女子の生理の時期がほぼそろってくる、
というようなこともあります。


このようなコミュニケーションの存在は、
大脳的なコミュニケーションに頼っている
現代人たちは、軽視しがちです。
論理性や合理性の少なかった太古の人類たちは
この直感的コミュニケーションの感覚が、
すばらしく発達していたことだろうと思われます。
そして、そこでは人も動物も植物も、空も大地も、
月も太陽もこの世にある全てのものが、
いのちと心を持ち、自他の区別はなく、
個と世界は一つのものとして溶け合っていたことでしょう。
世界中に残る神話には共通したものがあります。


今、この現代において、
そういうものをもう一度、
獲得しようとする時期が来ているようです。



  「十九世紀の絶頂期、
  西洋の人間は自分を永久に自然と戦い続ける
  孤独なヒーローにしたてあげた。
  体は要塞であり、五感は外部からやってくる
  不可避の敵を見つけて危険を知らせる番人だった。
  そうした考え方が知覚と現実を限定してしまった。
  外部世界は敵であり、常に戦いが待っていた。
  けれどもそんな時代はもう過去のものだ。
  自分が世界に対して、一人離れて存在できるとは
  何と傲慢な考え方だろう。
  感覚は――互いにからまりあったすべての感覚は――
  単なる番人どころか、
  世界と結びついていくための重要な手段である、
  ということを私たちは今、やっと理解し始めている。
  さまざまなリズムを知覚域に変換し、
  ものごとの関係を学ぶことによって、
  私たちは世界と調和のとれた関係を結ぶことができる。
  私たちは決して分離しているのではない、
  知覚できるものすべての一部なのだと、感覚は語りかけている。」

   G・レオナード著 『サイレント・パルス』より



私と、存在する全てのものは同じ一つのものである。
それは決して原始的な迷信でも、
宗教的な観念でもなく、
それが事実である、と言えます。
私たちが普段の生活をしている時の脳波はベータ波と呼ばれ、
ベータ波においてはその波形は
個人個人によって、千差万別です。
それが深いリラックス状態のアルファ波、
さらに深いシータ波、無意識のレベルのデルタ波と
深くなっていくに従って、
各人の脳波の波形は個性を失ない始め、
だんだんと近づいてきます。
それ以上深い意識レベルの脳波の観測は
今のところ、よくなされていないのですが、
おそらく究極では、波形の個別性はなくなり、
完全に一致してしまうであろうと言われています。
さらに、それは動物、植物、
おそらくは鉱物に到るまで例外はないだろう……
ということです。


人間を脳波的にとらえるならば、
覚醒脳波のベータ波交流においては、
人と同調しえないとも言えます。
そこで、相手のすべてを判断しようとしたり、
自分の側にとりこむことはできません。
そこは、お互いの感覚に距離をおいた〈刺激の場〉です。
その刺激から、お互いのより深いものが
あらわれてくるかもしれません。
つまり、「うどん好き」と「そば好き」の
違いのようなもので、
それを論議の対象にしてもしかたありません。
人と人との論争をよく聞いていると、
最初から全然違うことを論議していたり、
結局、同じことなのに違う方向からけんかをしている、
というようなことがよくあります。
「夫婦げんかは犬も喰わない」とはよく言ったものです。
表われ方の違いは野に咲く花の色の違いのようなもので、
いろんな色があることを楽しめばよいのです。


それがアルファ波、シータ波、デルタ波と深くなるにつれて、
同調がおこってきます。
一芸にひいでた者同士は、分野は違っていても、
感覚的に同じことを言っていたり、
すばらしい芸術家は他の芸術も理解する力を持っているものです。
何か一つを深く理解していくと、
どれもこれも同じものなのです。


私たちは地表に出ている――目に見える――部分では、
それぞれに違った個人として存在していても、
地中深くの根っこの部分に到れば同じ一つのものである、
植物のようなものと考えてよいでしょう。
その安心感の上に立って、世界をながめる習慣ができれば、
それぞれに違う個の働きも、かえってそれがおもしろく、
自分に深みを与えるものとして映りはじめ、
そこからコミュニケーションが生まれてくることでしょう。







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