meeting with remarkable people [023]
ヒルデガルト・フォン・ビンゲン
1098-1179

20世紀の終わりに、一躍、脚光を浴びた、中世の修道女がいる。
その名を、ビンゲンの聖ヒルデガルト。
幻視者であった彼女は、作曲家であり、
また自然学、医療などについて、多くの著作を残した。
彼女の残した作品が、再び重要な意味を持ち始めたのは、
いったいなぜなのか?

1098年、ドイツ、ライン河畔のベルマースハイムの貴族の家に、
その第10子として、ヒルデガルトは生まれた。
幼い頃から病弱だった彼女は、同時に超自然的な能力を示す。
両親は彼女が8歳になると、
ベネディクト会修道院に預けることを選択した。

1115年、彼女は17歳で正式な修道女となる。
その修道院には、
農園、薬草園、施療、宿泊所があり、
貧者救済の一環として施療行為を行っていたようだ。

そして、大きな転機は、40歳になって訪れる。
「汝が見聞きしたことを延べ記せ」という、天啓を受けたのだ。
それまで自分の特異な神秘体験については、
口を閉ざしていたヒルデガルトだが、この啓示が彼女を変えた。

彼女の口述によっては始まった『Scivias』は、
宗教界に大きな波紋を投げかけた。
当時の中世ヨーロッパにおけるキリスト教は、当然、男性中心。
主流派は強大な力を誇っていたものの、聖職者の堕落、
異端派の活性など、数々の問題を抱えていた。
そこに現れた、神の啓示を得たという修道女。
しかし、ヒルデガルトのビジョンは、
多くの人々に強い感銘を与えたのだろう。
様々な社会的階級の人々と交流するようになっていた彼女は、
当時の教皇エウゲニウス3世から、
『Scivias』執筆の許可と祝福を与えられる。
また、赤ひげ王とよばれた、
神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒ1世の庇護もとりつけた。

こうして、26の幻視を、記述、挿絵によって記した
『Scivias』は、10年後に完成。
ヒルデガルトは続いて、9巻からなる『Physica』を口述する。
約500種類の植物や樹木、魚、鳥、石が網羅されたこの本は、
ホリスティック医学の祖とも言われている。

そして彼女のスピリチュアリティが生み出した音楽。
彼女はまとまった曲が残る最古の女性作曲家と言われ、
印象的な旋律に富んだ聖歌77曲を作詞、作曲している。
当時の聖職者で作詞をする人間は珍しくなかったが、
一般的に曲作りは職業的な作曲家にまかされていた。
ヒルデガルトの場合は、その意味でも際立った存在であった。

彼女の音楽はすべてが単旋律だが、
音域が普通の聖歌より広く旋律も変化に富んでいることから、
奔放で幻想的な印象を受ける。
インスピレーション、感性、植物や動物についての深い知識、
日々行っていた癒しの行為、女性としての生き方、神への想い。
このような全ての要素が合わさって、
彼女の音楽は生まれたのではないだろうか。
現在では、代表的な曲として、「エクスタシーの歌」や、
「オルド・ヴィルトゥトゥム」がよく知られている。

1151年、53歳の時、ライン河畔ビンゲン近郊に、
独立した女子修道院を建立。
1179年、81歳でその生涯を閉じるまで、
精力的な活動を続けたという。
ぶどう畑に囲まれた小高い丘の上にあるアイビンゲンの修道院に
ヒルデガルトの遺骨はあり現在でも礼拝できる。

近年になって、ヒルデガルトの音楽は、
複数のミュージシャンによって見出され、
数々の録音が試みられている。
彼女を研究する書籍も、多数出版された。
21世紀を迎えた私達に、
ヒルデガルトの残した遺産は、何を伝えてくれるのだろうか?

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