meeting with remarkable people [089]
オーギュスト・ロダン
1840-1917


圧倒的な生命力を放つ数々の作品から、
「近代彫刻の父」と呼ばれる孤高の彫刻家ロダン。
従来の古典的で限定された「美」の枠を超え、
ある種、霊的ともいえるインスピレーションに導かれ、
あらゆるものの中に流れる永遠なる本質、自然や生の美しさに向かっていった。
人生の中で起こる愛や苦悩、すべてを受け入れ、昇華し、
新たな創造へと突き進んだロダンという人物に改めて光を当ててみたい。

1840年、フランソワ=オーギュスト=ルネ・ロダンは、パリの下町で生まれる。
少年時代は内気な性格に加え、極度の近視のために学校でも黒板が見えず、
14歳になっても読み書きさえろくにできなかったという。
しかし、ミケランジェロの版画集との出会いから
デッサンの仕事を目指すことを決意し、帝国素描学校に入学する。
デッサンばかりの一年が過ぎた頃、偶然に塑像室の扉を開き、彫刻との劇的な出会いをする。
粘土を盛りつけ、形づくる作業に歓喜したロダンは、自分の進むべき道を確信する。

20歳の頃、家計を支えるために進学を諦め、急激な都市開発が進むパリで装飾業者を渡り歩く。
昼は働き、夜は作品づくりに没頭する日々を送る中、
姉マリアが失恋のために修道院で自殺するという悲劇が彼を襲う。
愛する者の死に直面した時、はじめて神が見えてくるのかもしれない。
姉を喪った悲しみから、ロダンは修道院に入る。
しかし、彼の天職を見抜いた神父が世俗の生活へ戻るよう説得し、
再び彫刻の道を歩み始める。
これが、職人から芸術家へとロダンが変容する一大転機だったといえる。
その後、隙間風が絶えず吹き抜ける馬小屋に初めてのアトリエを構え、
本格的な自主制作にとりかかる。

23歳の頃、生涯の伴侶となるローズと共同生活をはじめ、
息子が生まれるが、結婚はしなかった。
ロダンは生涯、あまたの愛人をもつが、ローズは死が訪れるまで献身的に尽くした。
その頃、大きな期待をかけた作品『鼻のつぶれた男』を
初めてサロン(政府主催の官展)に出品するが、醜い男をモデルにしたロダンの作品は、
強烈な先駆性から酷評を浴びせられる。
苦しい下積み生活を続けながらも、フランスからベルギー・ブリュッセルへ
活動場所を移したロダンはさらに才能を開花させていく。

1875年、ローマの旅でミケランジェロの彫刻から衝撃を受け、
制作中だった等身大の像『青銅時代』を仕上げる。
この作品も人体から直接型を取ったとして非難されスキャンダルになるものの、
その類いまれな能力は徐々に知れ渡るようになる。
1880年に国から依頼を受けた『地獄の門』では、ダンテの『神曲』をモチーフに、
あらゆる感情を抱えて生きる何百もの人間が複雑に連鎖する壮大な宇宙が表現された。

1883年、42歳の頃、19歳の女性彫刻家カミーユ・クローデルと運命的な出会いをする。
カミーユの天才的な才能、若さ、美貌はロダンの創作に刺激を与え、
二人は師弟の関係を超え、愛し合うようになる。
この関係が続いた15年間、数多くの傑作が生まれるが、
結局カミーユの中絶や内妻ローズとの三角関係の末、破局を迎える。
ロダンが去り、芸術家としても評価されないカミーユは、
徐々に精神が蝕まれ、発狂する。
あまりに強力なロダンの存在から脱せず、
葛藤と苦悩に満ちた極限状態で作品を造り続けるが、
48歳で精神病院に幽閉され、73歳の時、孤独の中で人生に幕を閉じる。
月の人カミーユは、日の人ロダンに照らされることで、輝いていたのかもしれない。

1880年代から1900年のパリ万博におけるロダン回顧展に至るころまでは、
『カレーの市民』はじめ『バルザック像』など傑作が数々発表される
ロダンのもっとも充実した時期だった。
20世紀に入ると、パリのパンテオン前に代表作『考える人』が設置されるなど、
ロダンは世界的な巨匠として名声を確立する。
1917年1月、53年目にしてローズと正式に結婚。
その翌月には妻がこの世を去り、後を追うようにして11月にロダンもその生涯を終えた。

光の中でしか働けなかったというロダンは、
太陽が世界を照らすように、人間の内に潜む闇さえも光で照らし出し、
新たな次元へと引き上げていったのではないだろうか。
彼の手によって命を吹き込まれた創造物には、
時間や空間さえも超越した根源的な感覚を呼び覚ます
起爆剤ともいえるエネルギーが秘められているのかもしれない。



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