meeting with remarkable people [097]
ルー・アンドレアス・サロメ
1861-1937


強烈な個性と存在感を持つ才女、ルー・サロメ。
時代を代表する思索家や文学者たちが、彼女の存在に刺激され、
後世に残る作品がうみだされた。
一方、彼女の愛をえられずに破滅した者も多い。
ルー・サロメとはどんな人物だったのだろうか。

1861年、ロシアのペテルブルクで皇帝に仕える将軍の父の元、
ユダヤ系ロシア人の娘として生まれた。
5人の男児が生まれた後のルーに、父は惜しみない愛情を注ぐ。
幼少時代は、内向的で一人で空想の世界を好んだ。
奔放なルーに学校教育は肌に合わず、家庭と独学、
そして後年愛した恋人たちから学んだ。

19歳の時、父の死、教会との決別などの事態が続きロシア
を離れ、スイスのチューリッヒ大学へ進学を決意。ところが、
勉学への傾倒が過ぎ健康状態が悪化。1年足らずで辞めてしま
う。

1882年、21歳の時、ローマに養生で訪れたルーは、
哲学者パウル・レーとフリードリヒ・ニーチェに出会う。
意気投合した3人は、「聖三位一体」という奇妙な三角関係に入った。
彼らの関係は、ゴシップを生み出しながら、やがて破綻。
翌年、愛に破れたニーチェは、失意の中
『ツァラトゥストラはかく語りき』を10日間で書き上げた。

文才のあったルーは、
自伝的要素とフィクションを融合した『ルート』を出版。
同時代の女性の熱烈な支持を受け、その後も執筆活動を行った。
26歳になったルーは、突如、哲学者アンドレーアスと結婚。
彼は、自殺をはかり彼女を結婚に応じさせた。
個性を伸ばす権利と自由が何よりも重要だったルーにとって、
家庭を守り、夫の欲望を受け止める妻の義務はあり得ず、
結婚の条件は、性生活をしないこと。
自由な交際の容認だった。
しかし、当時同棲していたレーは
結婚にショックを受け失踪、自ら死を選んだ。
結婚は43年間続いたが、性交渉はなく
夫に代理妻をあてがったルーは自由に交際した。

36歳の時、ルーは一人の若い青年を紹介される。
彼は、14歳年下のルネ・マリア・リルケ。
まだ駆け出しの詩人だった。
たちまち親密になった2人は、湖畔に家を借りて暮らし、
そこへ夫が訪れることもあった。
ルーは彼の情熱に若い時の自分をみて、
彼はルーへの思慕から叙情的な詩をうたい、
やがて偉大な詩人へと昇華する。
ある時、ルーはリルケの発言から、
彼の意識下にある正体がわかり、
リルケがなぜ兵学の小説の執筆を切望するかを説明した。
それを聞いたリルケは、その小説を書くこと自体を放棄。
ルーは、勃然と、芸術家にとって精神分析は危険だと悟った。
以来、リルケが精神分析を受けることは常に反対した。
分析の成功は芸術家を悩ます悪魔を解き放つことはできるが、
創造を助ける天使をも滅ぼすからである。
別れた後もリルケはルーを最大の理解者として一生求め続けた。

41歳の時、ユダヤ人思想家マルティン・ブーバーの勧めで
愛の運命的な力を描いた『エロティーク』を執筆。
次第に関心が人間心理へと傾いていったルーは50歳の時、
フロイトの元で精神分析を勉強し、
彼の勧めで作家から精神療法医へと転向する。
フロイトのペシミズムとは別の焦点を持つルーは、潜在
意識の中に生命の根源をみるオプティミストで、
彼と意見の相違は多々あった。
しかし、フロイトもルーの観察の深さと
知性の明晰さには疑いの余地はなく、
自分自身をも笑うことができ、
いかなる悪意も虚栄も持たないルーの性格に感心していた。
当時、学説の対立や弟子ユングの離反の気配に落込んでいたフロイトは、
ルーとの友情は救いだった。
2人の平穏な関係は死ぬまで四半世紀にわたり続いた。

70歳の時、かつての恋人や夫もこの世を去り、
戦後の変革期にルーは本当のアウトサイダーになった。
生活は楽ではなかったが、精神を愛し、
孤独の世界の中に安らぎを見いだしていたルーは、回想録を執筆する。
最後まで自分自身を失うことはなく、
1937年、76歳で尿毒症のため眠ったまま息をひきとった。

男性のように、常に意欲的で、
社会通念や支配的な世界に屈しない精神面と、
女性的情熱のエロス、すべてを包む優美さをルーは十分に持っていた。
ジェンダーの義務を軽く交わし、常に愛と共に生きた。
才能ある者が魅了されて偉業を残し、破滅へと追いやられた者もいた。
エゴイストにも先駆者にも思えるルー・サロメへの思索は尽きる事がない。



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