meeting with remarkable people [109]
三木成夫
1925-1987


東大医学部で解剖学を学び、
解剖学者としての道を歩んでいた三木だが、
その過程で比較解剖学と出会い、
ものの成り立ちについて
深く解明したいという思いが募るうち、
次第に発生学へも学問の領域を広げていく。
例えばカラダのさまざまな箇所に現われる三半規管、
つむじなどのねじれへの関心など、
解剖学的観察眼とも言うべき
「形態」「かたち」へのユニークな着眼点から、
発生学についても独自の論を展開した。

当初、鶏の卵などを用いて進めていた発生学の研究から、
生命進化の過程をなぞるように
胎児が成長していくことを確認し、
次第に人間の胎児の研究も進めていく。
胎児の標本への解剖を行うことに
大きな葛藤を抱えつつも研究を進め、
生前は2冊を刊行。
『胎児の世界』(中央公論新社)は、
著者自身の手による胎児の点描画とともに、
古代の「おもかげ」をキーワードに、
感情をともなう独特の筆致で書き上げられた。
その解説は、研究レポートの領域を超え、
ドラマチックな物語のような熱を帯びている。

また体内にある各器官をその成り立ちの歴史から紐解き、
「植物器官」と「動物器官」に大別する。
前者は内臓とそれらを動かす内臓筋に代表され、
「吸収・循環・排出」を司るもの。後者は脳と骨、
そしてそれを動かす骨格筋に代表される
「感覚・伝達・運動」を司るものである。
そしてさらに、動物側からの植物側への侵食によって、
内臓など身体の各所で感情が生まれるという論を展開する。
三木によれば、脳はそれら身体で起こる
さまざまな感情を映し出しているに過ぎず、
動物器官を代表する脳が
人間において最大限に発達したことによって、
忘れ去られたさまざまなものがあると語る。

生前に刊行された三木の書籍はこれと
『内臓のはたらきと子どものこころ』
(築地書館/絶版)のみだが、
死後になって遺稿が多数出版された。
『内臓とこころ』(河出書房新社)は
糸井重里が刊行に際してネット上で言及し、
養老孟司が解説を寄せるなど、
その影響は生物学だけでなく
哲学や思想など多分野に渡る。
中でも吉本隆明は『ヒトのからだ』
『海・呼吸・古代形象』に寄せた解説の中で、
「からだとこころ」について
三木から受けた大きな思想的影響を綴っている。

私たちが直感的にとらえている
全人類、全生物に共通の「生命のリズム」や、
身体の内側から湧き上がる「内臓感覚」など、
三木の説には科学的証明が難しいものもあるが、
具体的な「かたち」や「動き」の
発見から始まる独特の語り口は、
やがて読む側の腑にストンと落ちていく
不思議な説得力に満ちている。




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